加齢によって基礎代謝量が落ちると、内臓脂肪が付きやすくなります。
また、内臓脂肪の付きやすさは遺伝が原因であるという研究も発表されています。
そこで内臓脂肪と加齢と遺伝の関係ついてご紹介します。
加齢が原因で内臓脂肪が増えるメカニズムとは
加齢によって内臓脂肪が増える主な原因は、基礎代謝量の低下です。
人間の体は何もしないでじっとしている間も、血液を循環させ、呼吸によって酸素を取り込むなどいろいろな活動を行っています。
こうした活動を行うためのエネルギーは、口から取り入れる食べ物を消化して、それらの栄養をエネルギーに変換することによって作り出されます。
このエネルギー変換のしくみを代謝と言い、何もしないで静かに横になっている状態で1日に使われるエネルギー量が基礎代謝量と呼ばれるものです。
基礎代謝量は成長期に最も多くなり、男性では18歳、女性では15歳頃にピークを迎えます。
しかし、体の成長が終わると、生命活動を維持するためのエネルギーはそれほど必要ではありません。
また、加齢に伴う老化が原因で代謝を行う細胞の部品が傷つき、代謝を行う力が弱くなることも基礎代謝量が下がって内臓脂肪が付きやすくなる原因だと考えられています。
内臓脂肪は女性よりも男性のほうが付きやすいのですが、それは女性ホルモンが内臓脂肪よりも皮下脂肪を蓄えるように指令を出しているからです。
女性が加齢によって更年期を迎え、女性ホルモンの分泌量が減ってしまうと、余った栄養は男性と同じように内臓脂肪にも変わっていきます。
加齢と脂肪の付き方についての研究データを見ると、30代未満の女性ではお尻や太ももの皮下脂肪が特に多くなっているのに対し、30歳を過ぎると腕やおなかの回りにも脂肪が付き始め、更年期を迎え50歳を超える頃には内臓脂肪も、ほかの部位の皮下脂肪と同じくらいまで増えていることがわかります。
内臓脂肪から分泌されるアディポネクチンが加齢によるメタボを阻止?
内臓脂肪と聞くと、健康に悪いイメージがありますが、内臓脂肪からは血管のメンテナンスに欠かせないアディポネクチンというホルモンも分泌されています。
アディポネクチンは、1996年当時、大阪大学医学部に勤務していた松澤裕次教授によって発見されました。
生活習慣による体調不良は、血圧の高い状態が続いて血管が傷つくことが原因で始まります。
血管は加齢によって徐々にもろくなっていくものですが、アディポネクチンは加齢によって傷ついた部分を探して修復していることがわかりました。
また、アディポネクチンには、血管を広げて血液の通りを良くしたり、インスリンの効きを良くする働きもあるので、血糖値が上がっても病気の原因になるのを遅らせる効果があります。
そのため、内臓脂肪からアディポネクチンが十分に出ていると、太っていても、血圧が高くても、血糖値が高くても生活習慣による体調不良になりにくいのです。
また、アディポネクチンには代謝を良くする働きもあるため、アディポネクチンが良く出る人は内臓脂肪が危険なほどふくらむこともないのです。
内臓脂肪が多ければ多いほどアディポネクチンが増えるような気がしますが、残念ながら内臓脂肪が増えるとアディポネクチンが出る量は減ってしまいます。
内臓脂肪の細胞の数は最初からほぼ決まっていて、余った栄養が内臓脂肪に蓄えられる時、内臓脂肪の1つ1つの細胞が大きくなることで対応するからです。
パンパンになった内臓脂肪細胞はアディポネクチンを分泌する力が落ちてしまいます。
また、内臓脂肪のある腹腔(ふっこう)内もぎゅうぎゅうになって血管が押しつぶされ、血液の流れが悪くなるので、内臓脂肪が言わば窒息して、善玉ホルモンのアディポネクチンを分泌する元気を失ってしまうのです。
内臓脂肪から分泌されるアディポネクチンの量は遺伝と関係?
慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターの新井康通医師は、110歳以上長生きしている人の内臓脂肪から分泌されるアディポネクチンの血中濃度が、若い世代の約2倍もあることを発見しました。
年代別の内臓脂肪から分泌されるアディポネクチンの血中濃度は、検査を受けた人たちの年齢別の平均値です。
つまり、加齢によってアディポネクチンの分泌量が増えるというのではなく、遺伝的にアディポネクチンの分泌量が多い人が生き延び、結果として年齢が高くなればなるほどアディポネクチンの濃度の平均値が高くなっているのです。
アディポネクチンの分泌量は、遺伝すると考えられています。
なぜなら、アディポネクチンの値が低い人の家族の病歴を調べていくと、遺伝しやすいと言われる病などで親や兄弟も亡くなっていることが多いからです。
遺伝的にアディポネクチンを出す量が少ない人は、内臓脂肪が付きやすく、遺伝的に内臓脂肪が増え、生活習慣による体調不良や血管の病気になりやすくなっている状態になりやすいと考えられます。