炭水化物や果物、甘いお菓子などに含まれていることが多い糖質は体内に入ると小腸から吸収されてブドウ糖に変わり、エネルギー源になります。
糖質は私達が生きていく上で欠かせないものですが、体内のブドウ糖の量を一定に保つ働きを持つインスリンの機能が低下したり、インスリンが上手く分泌されなくなると高血糖状態に陥り、高血糖の状態が続くと様々な疾患の引き金になってしまうことから、血糖値のコントロールは健康を維持する上ではとても重要なものです。
血糖値は食事の影響を非常に受けやすく、選ぶ食べ物によっては血糖値を上げてしまう食べ物もあることから、血糖値のコントールをする上で血糖値を上げる食べ物、血糖値を下げる食べ物を知っておくのはとても大切です。
食後に血糖値が上がる仕組みとは??
血糖値を上げる食べ物、血糖値を下げる食べ物を知る前に、食事をすると血糖値が上がる仕組みについて説明しましょう。
血糖値の変化
食べ物を食べると含まれている糖分が血管内に取り込まれて肝臓に運ばれます。
この時は血糖値が上昇している状態です。
血管内に糖分が増えると血糖値を正常値に戻すために、膵臓からインスリンが分泌されて、インスリンは糖分が細胞の中に取り込まれるように働きかけることで食事をする前までの血糖値に下げていきます。
血糖値の正常値
血糖値を測る際は食前などの空腹時に測ります。
正常値は以下の通りです。
空腹時 | 99mg/dl以下 |
【日本人間ドック学会】https://www.ningen-dock.jp/public/method
血糖値が下がらなくなるのはインスリンの機能が低下するから
血糖値が下がらない高血糖の状態が続くのはインスリンの分泌が少ない、分泌されるタイミング遅い、インスリンの作用が低下しているなどの理由が考えられます。
こうなると血糖の処理を上手く行うことができなくなり、食後数時間経っても血糖値が下がらない状態が慢性的に続く状態に陥る可能性もあります。
またインスリンは脂肪合成を高める、脂肪分解を抑制する作用を持っていることから、血糖値が上がる食べ物を多量に摂取するとそれだけ脂肪が蓄積されやすくなってしまいます。
インスリンの働きを正常にするためにも血糖値を上げる食べ物、血糖値を下げる食べ物を知っておくのは重要なポイントとなります。
血糖値を上げる食べ物とは
血糖値を上げる食べ物の特徴は糖質が主体になっていることです。
また摂取すると吸収されやすい形でブドウ糖を含む食べ物も血糖値を上げてしまいます。
炭水化物(ご飯、パン、麺類、イモ類など)
血糖値が上がるイメージを強く持っている人も多いのが炭水化物です。
3大栄養素の炭水化物は糖質と食物繊維が合わさったものですが、そのほとんどは糖質であり、血糖値を上げる代表的な食べ物となっています。
というのも炭水化物にはブドウ糖が多く含まれており、さらに炭水化物に含まれるブドウ糖は非常に吸収されやすい形です。
過剰に摂取すると急激な血糖値の上昇に繋がります。
ただし炭水化物はエネルギー源でもあるので、極端に炭水化物を減らしたりするのが栄養バランスが乱れてしまうことからあまりおすすめはできません。
炭水化物による血糖値の急上昇を防ぐためには食べる順番や血糖値の上がりにくい玄米や全粒粉のパンなどを選ぶようにしましょう。
チョコレートなどのお菓子
チョコレートなどの甘いお菓子は砂糖や油脂を多量に含んでいます。
糖質の多い食べ物を食べれば食べるほど血糖値は上昇しやすくなることから、血糖値のコントロールを上手く行うためには甘いお菓子は控えるのが無難です。
どうしても甘いお菓子を食べたい場合は一度に全部を食べるのではなく、一日に食べる量を半分や1/3にして、2日に分けて食べるなど工夫をするようにしましょう。
血糖値を下げる食べ物とは
血糖値のコントロールをする中で積極的に取り入れたいのが血糖値を下げる食べ物です。
血糖値のコントロールでは炭水化物や甘いお菓子など血糖値を上げる食べ物を避けることを考えがちですが、血糖値を下げる食べ物を積極的に取り入れることで血糖値のコントロールを上手に行うことができるようになります。
青魚
イワシやサバ、アジなどの青魚にはオメガ3系の不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。
DHAやEPAという成分の名前を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
特に血糖値のコントロールに効果を発揮するのがEPAです。
EPAには血液をサラサラにする作用や中性脂肪を下げる作用があり、さらにEPAにはGLP―1の分泌を促進する作用があります。
GLP―1の分泌が促進されることでインスリンの分泌を促進したり、必要以上に食べすぎないように食欲を抑える作用があることから、血糖値のコントロールが必要な疾患の治療にも取り入れられています。
GLP―1は食べ物から直接摂取することができないことから、積極的にEPAを摂取してGLP―1の分泌を促進します。
血糖値のコントロールに効果的な青魚の食べ方
EPAなどのオメガ3系の不飽和脂肪酸は青魚の身の部分よりも、皮や頭、骨や内蔵などに多く含まれています。
また加熱に弱いことから生の状態で食べるのが好ましいのですが、青魚を生で食べるというのはなかなか取り入れにくいものです。
そんな時は骨や皮なども柔らかく食べることができる缶詰を取り入れたり、加熱した場合は魚から出た油も一緒に食べることができる工夫をしてみましょう。
玉ねぎ
炒めものや煮込み料理、サラダなどによく使われるのが玉ねぎです。
季節を問わずいろいろなメニューに取り入れることができ、自宅に必ず玉ねぎがストックしてあるという人も多いのではないでしょうか。
玉ねぎにはイソアリインという成分が含まれており、このイソアリインには血糖値を下げる作用があります。
また玉ねぎにはポリフェノールの一種であるグルタチオン酸やケルセチンなどが血液の中のインスリンの作用を高めることで糖の代謝を活発にすることでも血糖値を下げることができます。
玉ねぎは直接インスリンの分泌などを促すわけではありませんが、インスリンの分泌を調整しているインクレチンを増やすことができるので、インスリンの量も増加し血糖値のコントロールに役立てることができます。
ただし、玉ねぎは加熱すると強い甘みを感じることができることから糖質量も他の野菜に比べると高い傾向にあり、大量に食べるのは控えるようにしましょう。
玉ねぎ氷で手軽に摂取する
血糖値のコントロールに玉ねぎを取り入れる際に手軽に取り入れることができるのが玉ねぎ氷です。
玉ねぎを電子レンジで加熱して、加熱した時に出た汁ごとミキサーで撹拌し適量の水を加えて製氷皿に入れて冷凍するだけです。
一日2個程度を目安に汁物や煮込み料理、野菜ジュースなどに加えて取り入れることで玉ねぎの血糖値を下げる効果を手軽に得ることができます。
キャベツ
ビタミンCやβカロテン、ミネラルなどを豊富に含んでいるのがキャベツです。
サラダや揚げ物の付け合せ、煮込み料理などいろいろなメニューに取り入れることができるポピュラーな野菜ですが、キャベツも血糖値のコントロールに役立てることができます。
キャベツが血糖値のコントロールに役立てることができる理由は食物繊維を豊富に含んでいるからです。
食事で食物繊維を積極的に取り入れることでご飯やパン、麺類などの炭水化物の吸収を遅らせることができ、血糖値の急激な上昇を抑えることができます。
毎食1皿キャベツを取り入れましょう
食卓に欠かせない野菜の一つとなっているキャベツは特別な癖もないことから様々な料理に取り入れることができます。
食物繊維をたくさん取り入れることができ、さらにキャベツをよく噛むことで満腹感を得やすくなるので食べ過ぎを防ぐこともできます。
毎回の食事に様々な調理方法でキャベツを積極的に取り入れましょう。
納豆
大豆を発酵させた発酵食品である納豆は日本人にとって馴染み深い食べ物です。
納豆に含まれるナットウキナーゼには血栓を溶かす強力な作用があることから健康を意識する人にとって欠かせない食べ物となっており、さらに大豆タンパク質やイソフラボンなども手軽に摂取することができるのでよく食べているという人も多いのではないでしょうか。
また納豆には食物繊維やビタミンB2が豊富に含まれており、糖質と一緒に摂取すると血糖値の上昇を抑える作用があります。
きのこ類
しいたけやしめじ、えのきやまいたけなど年間を通して安価な価格で食卓に取り入れることができるのがきのこ類です。
きのこ類特有の香りや食感を楽しむメニューも豊富にあることから、きのこ類をよく食べているという人も多いのではないでしょうか。
きのこ類には食物繊維が豊富に含まれており、血糖値の急上昇を防ぐことができますし、繊維質なのでよく噛むことで少ない量でも満腹感を得やすい食べ物です。
またブナシメジやブナピーなどのきのこ類にはインスリンの分泌を促進する作用があることから、血糖値を下げる効果を持っています。
海藻類
わかめや昆布、めかぶやもずくなど水溶性食物繊維を豊富に含む海藻類は血糖値のコントロールに積極的に取り入れたい食べ物です。
水溶性食物繊維は体内でほとんど吸収されることなく胃や腸の中をゆっくりと移動し、糖質の吸収を緩やかにすることができます。
セカンドミール効果にも注目する
血糖値のコントロールでは血糖値を上げる食べ物を避ける、血糖値を下げる食べ物を積極的に取り入れる他にセカンドミール効果にも注目しましょう。
セカンドミール効果は食後の血糖値の上昇を抑えるのに役立てることができます。
食後の血糖値の上昇を抑えるセカンドミール効果とは
食事をすると糖を細胞や臓器などに取り込むために血糖値は一時的に上昇します。
これはごく自然なことですが、血糖値が異常に高くなってしまったり、高い状態が長時間続くと肥満や疾患などの原因になってしまうことから、血糖値の上昇を緩やかにすることで血糖値を上手にコントロールすることができます。
そこで今注目されているのがセカンドミール効果です。
セカンドミール効果は、最初にとる食事が次にとる食事の血糖値にも影響を及ぼすという考え方です。
例えば一日の最初の食事で納豆を取り入れるとその食事だけではなく、次の食事をとった後の血糖値の上昇も抑えることができ、特に朝食のセカンドミール効果は昼食まで続きます。
昼食は職場などで炭水化物を摂取する機会が多いという人も朝食で納豆や海藻、きのこ類、大麦などを食べておくことで効果を得ることができるようになります。
血糖値を管理する際の食事方法のまとめ
血糖値の上昇は食事に影響されやすいことから、血糖値のコントロールをする際は血糖値を上げる食べ物、血糖値を下げる食べ物を知っておくことが大切です。
またこれらの食べ物を取り入れるのに加えて食べる順番も意識することで食後の血糖値の上昇を上手にコントロールすることができます。